目の病気

ウイルス結膜炎 うつりやすい「はやり目」

目の白目の部分と上まぶた・下まぶたの裏側を覆う半透明の膜を結膜といいます。この結膜に炎症が起きた状態が結膜炎です。強い結膜炎では、白目の血管が血走ったように充血し、目やに、時には涙が出ることもあります。

結膜炎は主に原因によって大きく三つに分けることできます。細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎、アレルギー性結膜炎の三つです。そのうちの前者二つは感染性の結膜炎で、もっとも感染力が強く注意が必要なのがウイルス結膜炎です。

 

ウイルス性結膜炎

ウイルスの感染が原因で起こる結膜炎をウイルス性結膜炎といいます。細菌と同様に様々なウイルスが原因になります。2020年に「新型コロナウイルス感染症の初期症状として結膜炎がみられることがある。」というニュースが流れたのを目にした方もいると思います。

典型的なウイルス性結膜炎では細菌性結膜炎と比べ強い充血がみられ、涙やサラッとした目やにがたくさん出ます。目がゴロゴロするといった異物感、目の痛みを感じることもあります。

ウイルス性結膜炎の原因となるウイルスで代表的なのは、アデノウイルスとエンテロウイルス、ヘルペスウイルスです。

アデノウイルスが原因で起こるウイルス性結膜炎には特別に病名がついているものがあります。流行性角結膜炎と咽頭結膜熱です。ともにアデノウイルスが原因ですが、アデノウイルスはアデノウイルスでもウイルスのタイプが異なります。

アデノウイルスにはインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスのように短時間で判定できる抗原検査がありますが、その感度は70%程度といわれており、検査結果が陰性であっても感染を否定できるわけではなく、安心はできません。

 

流行性角結膜炎

流行性角結膜炎は俗に「はやり目」と呼ばれるもので、名前から分かるように人から人にうつりやすい(感染力が強い)のが特徴です。周りにうつしてしまうため、学生では治るまで出席停止になります。家族内感染や院内感染にも注意が必要です。

流行性角結膜炎は学校感染症の第三種に指定されています。第三種は、「学校教員区活動を通じ、学校において流行を広げる可能性がある伝染病」を規定しており、出席停止の期間の基準は「病状により学校医またはその他の医師において伝染の恐れがないと医師が認めるまで」とされています。
第三種にはウイルス性結膜炎の一つである急性出血性結膜炎も含まれています。エンテロウイルスとコクサッキーウイルスの感染が原因です。
その他、コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス・パラチフスが第三種に指定されています。

流行性角結膜炎は、かかった人の涙や目やにから他の人にうつってしまいます。手すりやドアノブ、つり革などを介した接触感染も起こります。他人の触れた物を触った後は必ず手を洗い、決して自分の目を触らないようにしましょう。新型コロナウイルス感染症対策でもいわれていることですが、外出時は自分の顔(特に目、鼻、口)を触らないように気をつけてください。

流行性角結膜炎は感染してから、1,2週間程度の潜伏期間の後に発症します。多くの場合は急な目やにと充血が起こります。目がゴロゴロする、目が痛い、涙が出る(流涙)、まぶたが腫れる(眼瞼腫脹、眼瞼浮腫)、耳の前のリンパ節が腫れて痛い(耳前リンパ節腫脹)といった症状が出ることもあります。通常かゆみは無いか、あっても軽度です。発症してから数日でピークを迎え、徐々に症状は改善していきますが、治るまでには1週間から3週間程度かかります。片目で発症し、数日後に反対の目に起こることもあります。

黒目の部分(角膜)にも炎症が及び(角膜上皮下浸潤)、程度よってはまぶしさやかすみの症状がみられます。この場合は治療が長期に及ぶこともあります。

アデノウイルスを退治できる治療薬はありません。風邪と同じで、自分自身の免疫力で徐々に治っていくのを待つことになります。その手助けとして抗炎症の点眼薬や、細菌性結膜炎の合併、またはその予防に抗生剤点眼を使用したりします。前述した角膜上皮下浸潤が出てきた場合には、副腎皮質ステロイドの点眼薬が必要になります。

 

咽頭結膜熱

咽頭結膜熱はプール熱と呼ばれるものです。夏に多く見られ、プールで感染することがあるのでこのように呼ばれますが、プールだけで感染するわけではありません。接触感染・飛沫感染によりどんな場所でも感染が広がる可能性があります。流行性角結膜炎と同じアデノウイルス感染が原因ですが、同じアデノウイルスでもウイルスのタイプが違います。

咽頭結膜熱では結膜炎だけでなく発熱とのどの痛み(咽頭炎)がみられます。

咽頭結膜熱は学校伝染病の第二種に指定されています。第二種は、「空気感染又は飛沫感染するもので、児童生徒等の罹患が多く、学校において流行を広げる可能性が高い感染症」を規定しています。出席定期期間の基準は、感染症ごとに個別に定められています。咽頭結膜熱では、「発熱、咽頭炎、結膜炎などの主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止とする」されています。
その他第二種には、インフルエンザ、百日咳、麻疹(はしか)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、風疹、水痘(みずぼうそう)、結核、髄膜炎菌性髄膜炎が指定されています。

関連記事

コメント

この記事へのトラックバックはありません。