ドライアイとは
ドライアイは「乾き目」ともいわれ、名前の通り目の表面が乾燥した状態です。涙の量が減ったり、涙の質が変わったりすることで起こり、様々な不快な症状を引き起こします。
ドライアイの方は日本に約2200万人もいるといわれています。加齢によるものの他、シェーグレン症候群や甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、関節リウマチ、スティーブンス・ジョンソン症候群などの病気の症状の一つとして起こるものがあります。
日本ではドライアイの定義は2016年に改訂され、診断基準が定められています。
・ドライアイの定義
「ドライアイは、様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある。」
・ドライアイの診断基準
「BUT(涙液層破壊時間)5秒以下かつ自覚症状(眼不快感または視機能異常)を有する。」
2016年 ドライアイ研究会
ドライアイのタイプ、原因
ドライアイは主に、涙の安定性が低下したタイプ:涙液層破壊時間(BUT)短縮型ドライアイと、涙の量が少ないタイプ:涙液減少型ドライアイに大きく分けられます。ただし両方が合併した混合タイプの方もたくさんいらっしゃいます。
涙は油層、水層、ムチン層という3層から成っており、涙の安定性には脂質、水分、ムチンの3成分のバランスが大きく関係しています。そのバランスと涙の安定性は、涙の量や質、目の表面(角結膜上皮)の状態、まぶたの状態(マイボーム腺機能不全※など)など、たくさんの要因によって決まります。涙の安定性が低下したタイプは、涙の量が少ないタイプよりも比較的若年者に多く、アレルギー性結膜炎の合併も多いといわれています。涙の量が少ないタイプと同様の症状を引き起こしたり、目の疲れの大きな原因になったりすることがあります。
シェーグレン症候群※などの自己免疫疾患と呼ばれる病気では、涙腺の分泌障害によって涙の量が減り涙液減少型ドライアイとなります。
その他に、加齢やコンタクトレンズの装用、スマートフォンやゲーム機、パソコン等の使用、長時間の運転、乾燥した環境などもドライアイの原因になります。また白内障などの目の手術後、特にLASIK:レーシック(屈折矯正手術)を受けた後にドライアイになることも知られています。ドライアイのある方がLASIK:レーシック手術を受ける場合は注意が必要です。
※マイボーム腺は上下のまぶたに数十個並んでおり、まぶたの縁に開口しています。涙の油層はマイボーム腺から分泌される脂質でできています。マイボーム腺機能不全(MGD)と呼ばれる状態では、マイボーム腺が詰まったり、炎症を起こしたりすることで涙の脂質が減少し、涙液のバランスが崩れ安定性が低下します。 ※シェーグレン症候群:シェーグレン症候群は自己免疫疾患の一つで、涙や唾液の量が減少し、ドライアイやドライマウス(口腔乾燥ド)を起こします。中年の女性に多い病気です。目の表面が傷だらけになる重症のドライアイになることもあります。(角膜上皮障害、角結膜上皮障害)
・加齢:涙液の大部分は涙腺という上まぶたの外側の奥にある組織で作られており、瞬きによって目の表面に広がります。加齢により涙腺からの涙の分泌量が減少し、また涙の安定性も低下します。
・コンタクトレンズの装用:ソフトコンタクトレンズでは、ハードコンタクトレンズと違い、レンズ自体が涙の水分を吸収してレンズの表面から蒸発させるため、ドライアイになることがあります。ハードコンタクトレンズでもコンタクトレンズのカーブ(BC:ベースカーブ)やサイズ(DIA:直径)がきちんと目に合っていない場合、目の表面とコンタクトレンズの間の涙の循環が悪くなりドライアイを引き起こします。
・乾燥した環境:エアコンの使用中や湿度が低下する冬には、空気が乾燥して、目も乾きやすくなります。
・スマートフォンやゲーム機、パソコン等の使用、長時間の運転:ディスプレイを集中して見ている時や運転中は、無意識のうちに瞬きの回数が減少してしまいます。人間は普段、1分間に15~20回程度瞬きをしていますが、何かを集中して見つめている時は、普段の半分から4分の1程度にまで瞬きの回数が減少することがあります。瞬きの回数が減ると、涙が目の表面に広がりにくくなり、蒸発する涙の量も自ずと増えてしまいます。
ドライアイの症状
ドライアイでは次のように様々な自覚症状がみられます。あてはまる症状はありますか?
- 目が乾く
- 目がしょぼしょぼする
- 目がごろごろする
- 目が痛い
- 目が疲れる
- 目が重い
- 急に涙がこぼれることがある
- 目が時々かすんで見える、ぼやける
- 夕方、夜になると目が充血してくる
- 起床時に目が開けにくい
ドライアイの治療法
ドライアイの治療としては主に点眼薬の処方が行われます。
以前から使われてきたのは、人工涙液(マイティア、ソフトサンティア)とヒアルロン酸ナトリウム製剤の点眼薬(ヒアレイン)です。人工涙液の点眼で涙液を補充し、ヒアルロン酸ナトリウム点眼で目の表面を保湿し保護します。
近年ではその他の治療薬として、水分とムチンの分泌を促進するジクアホソルナトリウム点眼薬(ジクアス)、ムチンの産生を促進するレパミピド点眼薬(ムコスタUD)が開発され、広く使用されています。今後も新薬の登場が期待されています。
点眼薬以外の治療法としては、涙点プラグという治療が行われます。特に点眼薬で十分な効果が得られない場合や、重症のドライアイの患者さんに積極的に行われています。涙の排出口である涙点に涙点プラグと呼ばれるシリコン製の小さな栓をすることで涙の排出を防ぎ、目の表面に涙を溜めて潤す治療法です。涙点プラグは簡単に入れることができ、また取り外すこともできます。シリコン製のプラグではなく、コラーゲンを涙点に注入する方法もあります。
ドライアイ対策
普段からできるドライアイ対策をいくつか紹介します。
・温罨法:蒸しタオルやアイマスクでまぶたを温める方法です。まぶたを温めて軽くマッサージすることで、マイボーム腺の詰まりをある程度解消することが期待できます。
・加湿器を使用して部屋の湿度を保つ。扇風機やエアコンの風が直接顔に当たらないようにする。
・スマートフォンやゲーム機、パソコン等の長時間の連続使用を避ける。適度に休憩をはさみながら行いましょう。姿勢やイスの高さを調整し、ディスプレイを見下げるようにする。
・コンタクトレンズを使用している方は、眼科でカーブ、サイズが自分の目にきちんと合ったコンタクトレンズを処方してもらう。コンタクトレンズの装用時間を短くする。
・リッドハイジーン:目の縁をきれいにする。アイシャンプーやベビーシャンプーを薄めたもので、目の縁を洗浄し、きれいな状態を保ちましょう。マイボーム腺機能不全の予防や治療につながります。
・保湿用の眼鏡(ドライアイ眼鏡)を使用する。
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